MotoStudies: バイク研究のための覚書

大学でバイクの研究を最近始めた交通研究者です(バイクに乗るのは初心者)

米国のバイク乗りにおける「ハーレー派」と「日本車派」の口論を和訳した

ハーレー派と日本車派が口論する動画

アメリカのバイク乗りの世界では、昔から、ハーレー派と日本車(スポーツバイク)派の文化的な対立があるらしい。それを扱った論文も読んだことあるし、バイク好きの心理学者のエッセイにも書いてありました。
ハーレー派は、「この重厚な車体、クロームメッキの輝き、野性味のある鼓動感こそバイクの醍醐味」と考えていて、日本車を「チープなプラスチックの塊」と馬鹿にしている。ハーレーには文化と伝統があり、日本車にはない、みたいな感じです。
一方、日本車派は日本車派で、レーサーが好きだったり性能重視だったりするので、ハーレーみたいな遅くて操りにくいバイクを逆に馬鹿にしているとか。


で、そんなハーレー派と日本車派の争いを戯画化したアニメ動画がありました。どっちかというとハーレー派を揶揄する内容ですが。もちろんどちらの主張にも賛成はしないけど、こういう対立があるんだなってのは面白いと思いました。
動画は英語しかないけど、短いので、以下のとおり日本語に訳しておきました。知らないスラングが多かったので結構ググって勉強になった(笑)


www.youtube.com
 
 

日本語訳

A: 今、俺のハーレーを見てたよな。どうだ、凄いだろ?
B: いいと思うよ。でも僕はクルーザーには興味ないね。
A: は?何言ってんだ。これこそアメリカンバイク*1だろ。ハーレーのバイクは世界一ヤベェよ*2
B: 「最悪」って意味なら同意するね。
A: ははーん、分かったぞ。お前、ジャップのバイクに乗ってるな?
B: そうだよ。
A: 反米主義者め。テロリストにも手を貸しているんだろう、このクソ共産主義者が。
B: 君、バカだろ。
A: あんな「炊飯器」*3によく乗ってられるな。全くアメリカ的じゃねぇよ。
B: 君のハーレーだって厳密にはアメリカ製じゃないよ。
A: 嘘言うな。ハーレーはメイド・イン・アメリカだ。Harley Owners Groupの掲示*4にそう書いてあったから間違いない。
B: 違うね。アメリカ製の部品も使われてるけど、それ以外は日本、中国、メキシコとか色んな国で作ってる。嘘だと思うなら、君のハーレーのセルモーターを確認してみな。「Denso*5って書いてあるから。それから、君のバイクのフレームは日本のリサイクル鉄で作られてるんだよ。これ本当。
A: でもとにかく、俺のバイクは日本車みたいなプラスチックの塊じゃねーんだよ。俺はあんな、子供の遊び道具みたいなバイクに乗るのはゴメンだね。
B: 池沼かよ*6。スポーツバイクは、アルミとプラスチックを使うことで車体を軽量化してるんだよ。だから速いし、操作性もいい。ハーレーのポンコツバイクとは違ってね。
A: このホモ野郎が。
B: 笑わせんな、君のほうがヴィレッジ・ピープル*7みたいな格好してるじゃないか。
A: 女が寄ってくるバイクは、ハーレーだけだぜ*8
B: そうだといいな。君らハーレー乗りは、生身じゃ女に見向きもされないだろうから。
A: ハーレーは自由の象徴であり、俺の個性を表現する手段なんだよ。
B: ほう、個性ね。だから君の仲間は、全員まったく同じハーレーのキャップ、ベスト、チャップス、ブーツを着けてるのか?(笑)*9ゲイの海賊集団みたいに見えるぞ。
A: 分かってないな。俺は果てしなく続く道路で自由を謳歌する、筋金入りの*10反逆者なのさ。
B: 本当か?じゃあ、1日でいちばん遠くまで走ったのは?
A: 去年、スタージス*11まで行ったな。
B: バイクで?
A: ……そこでバイクに乗ったんだ。
B: スタージスまでバイクで走ったわけじゃなくて、トレーラーにバイクを積んで行っただけだろ?
A: まぁそうだが、仕事が忙しくて、全行程をバイクで走るほどの時間はなかったってだけだ。
B: ほう。ひょっとして君は……弁護士なのか?
A: いや、会計士だ。
B: なるほど、そうだろうな(笑)*12
A: おっと、そろそろ行かなきゃな。俺たちのチーム*13は今日から長旅に出るんだ。
B: 確かに、もう行ったほうがいい。じゃないと古着屋が閉まる前にイースト・ヴィレッジに辿り着けないからな(笑)*14
A: このクソが。
B: 見かけのために乗り、乗ってるフリをしてるだけ*15。馬鹿馬鹿しい*16

*1:ここは“American Iron”で、直訳すれば「アメリカの鉄」であり、アメリカ製の機械であることを誇りを込めていうフレーズみたいだけど、ニュアンスの出し方が難しいので「鉄」と書かなかった。

*2:worstではなくbaddestと言っていて、ここでは肯定的な意味

*3:“rice burning crotch rockets”と言われている。“Rice Burner”という、日本車を馬鹿にする意味のスラングがあり、「コメばっか食ってる奴ら」みたいな侮蔑が含まれている。炊飯器はburnerじゃないけど、一言で意訳するなら炊飯器ぐらいが面白いかなと。訳に含めなかったけど、“Crotch Rocket”も日本のスポーツバイクを侮蔑するスラングで、直訳すれば「股間のロケット」となり、チンコみたいな下品な雰囲気を出しつつ「速いことだけが取り柄でぜんぜん快適じゃないロケットみたいな乗り物に、前傾姿勢で無理してしがみついてる」みたいなイメージを表してるんだろうか。よくわからんので誰か教えて。

*4:HOG Forumの意味がこれで合ってるか分からんけど、H.O.G.はHarley Owners Groupらしい。

*5:日本のデンソーが電気系の部品を作ってるってこと。

*6:ruhtard

*7:ハーレー乗りのファッションがゲイっぽいと揶揄している。70年代に「YMCA」とか「Go West」とか歌ってたので有名だけど、メンバーがゲイだったらしい。コスプレしながら歌ってて、確かに、革ジャンの人とかバイクのヘルメットかぶった人がいる。

*8:patented to make women come

*9:チャップスは、ズボンの上から防御用に履くやつ。ハーレー乗りはみんな服装が似てることを揶揄している。

*10:badass

*11:サウスダコタ州の都市。どうも、このスタージスまでバイクで走るラリーが毎年開催されてるみたい。

*12:「会計士」は、風俗やポルノ系の仕事をしてる人が、ネットで職業を偽って名乗るときの定番らしい。それを踏まえて、嘲笑する感じ。

*13:wolfpack

*14:「旅に出るなんてウソで、近所の古着屋でたむろするだけだろ?」ってからかってる感じかな。ニュアンスがよく分からん(笑)“antique shop”だから、骨董品屋と言うべきだろうけど、日本でいうとイメージ的に、原宿や下北の古着屋に集まるような感じなのかなと。全然知らんのだけど、イースト・ヴィレッジってのはニューヨークの一角で、古着屋とかがたくさんあるらしい。

*15:ride to pretend, pretend to ride

*16:dickhead