MotoStudies: バイク研究のための覚書

大学でバイクの研究を最近始めた交通研究者です(バイクに乗るのは初心者)

バイクと飛行機は似ている?

1ヶ月ぐらい前に、『FASTEST』というMotoGPドキュメンタリー映画(というよりほとんどヴァレンティノ・ロッシのドキュメンタリーと言ったほうがいいですが)をみました。


www.youtube.com


この映画に登場するヤマハの日本人エンジニアの人が、以下のような話をしていたのが面白かったです。


「子供の頃は航空機のエンジニアになりたかった。だが戦後、アメリカによって日本は航空機製造を禁じられ、優秀なエンジニアは皆自動車か二輪業界に行った。それが日本のバイク工学が進歩した理由だ。バイクは動力学的に航空機に似ている。単純な乗り物に見えるが、実際は四輪自動車に比べかなり複雑な3次元の動きをする。」


そして、海外のあるバイクジャーナリストも、


MotoGPマシンは飛んでいるようなものだ。バイクがコーナーに進入し60度に傾く時、タイヤには2つの重力が働く。航空機でも同じことが起き、翼をもぎ取ろうとする。」


と語っていました。
この発言が興味深いと思ったのは、他の文脈で「バイクに乗ると、空を飛んでいるような気分になる」という人もいて、「なんかバイクって、いろんな意味で飛行機に似ているのかな?」と連想が働くからです。
たとえば、以前紹介した『Why We Ride』と(先日書いた紹介記事)いう映画の中では、


「人間なら誰だって、空を自由に飛んでみたいと夢みたことがあるだろ。バイクに乗る時、スロットルをひねると、まさに飛んでいるような気分になるんだよ」


と言う人がいました。また、その映画に出てくるボンネビル・スピードウィークの関係者は、


ムスタングやコルセアのような昔の戦闘機と同じで、ボンネビルを走るライダーは、勘だけを頼りに(seat-of-the-pants)操縦してるんだ」


というふうに、最高速に挑戦するバイクとライダーを、戦闘機とパイロットにたとえていました。
私はそういうスポーツ走行とは縁のない初心者ですが、それでも、高速道路を走っているときとか、山道を左右に旋回しながら走っているときの気分は、言われてみれば空を飛んでいるような感覚に近いのかもなと思います。


飛行機とバイクのわかりやすい共通点の一つは、曲がるときに車体(機体)を傾けなければならないという点でしょうね。ここは四輪車とだいぶ違う。あと、クルマと違って前傾姿勢で風を受けながら走るので、これは鳥とか馬みたいな動物の疾走感に似ているかも知れません。
また、バイクが飛行機に似ていると言う人は、飛行機といってもジャンボジェットのようなものではなく、ゼロ戦とかセスナ機みたいなものを念頭に置いてると思うのですが、それらとバイクの共通点として「マシンとの一体感」ってのもあるかもしれません。


映画とかではないですが、バイク初心者向けに気をつけるべきことを述べている下記のYouTube動画(「安全のために、何よりもタイヤにカネをかけろ」などなかなか参考になる話が多い)では、最後のほうで少しだけ、「スピードを出さないと安定しない」という点でバイクと飛行機は似ているという話が出てきます。たしかにそうですよね。推進し続けなければ、飛行機は堕ちるし、バイクはこけます。
https://www.youtube.com/watch?v=lVYThFQPPL8
(あと、これはちょっと趣旨が違いますが、いきなりハイパワーな大型バイクにのるのは、セスナ機とかでの練習をすっ飛ばしてジェット戦闘機に乗るようなものだという話が前半で出てきます。)


私は最近になってバイクに乗るようになったのですが(原付なら高校生だった20年前に乗っていましたが)、バイクに乗らない人にバイクの気持ちよさを伝えるとき、飛行機のたとえを使うようにしています。「もし許されるなら、一人乗りのセスナ機に乗って空を自由に飛んでみたいって、だいたいの人が思うやん?俺は飛行機は操縦したことないから分からんけど、たぶん快感の方向性としては似てると思う。とくに夜中に高速道路を走ってると、周りが真っ暗なので、本当に空を飛んでるような気がしなくもない」みたいな感じで。